シジュウカラと奇跡と悲劇
事件が起きたのは、シジュウカラが巣作りをはじめ、抱卵し、孵化が終わってから16日目くらいの朝のことだった。
おいら畑にいた。
巣箱とは反対側の畑でトマトの面倒をみていた。、そしたらなんと、お母さん鳥かお父さん鳥かはわからなんのだが、畑仕事をしている私を鳥が呼びに来たのである。
嘘みたいな話で恐縮です。
嘘つきと言われてもしかたがないような話である。しかし、本当なのであります。本当だということのごり押しでもって話を前に進めて申し訳ないのかもなのでありますが、おいらに対してシジュウカラがお得意の警告音を「ジージー」鳴らしてきたのであります。いつもとは違う大きな音量でもって、そんでもってヒステリックな鳴き方の感じが尋常ではないと思わせる、そんな感じの、そんな感じの雰囲気というか、駆け込み訴えに、「何かあったか?」そう感じた訳なのであります。そんでもって、巣箱の方へいそいで向かい、見るとなんと、巣箱の前にプチサンプルのようなシジュウカラのチビ助がアスファルトの上にいたのであります。
巣箱から飛び出しておるではありませんか。
最初は何がおこったのか全然理解できず、頭が真っ白な状態で茫然としてしまっていたのだが、だが、ない頭を振り絞って、いろろいろを考え、「そ そ そういえば、さっき、雀が巣穴に向かって攻撃を仕掛けていた」、そんなことを思い出したのでありました。いわゆる「雀の誘拐」と言われるやつであります。雀はシジュウカラの巣穴に外側からしがみついて、親が餌を持ってきたと勘違いし大きく口をあけて近づいた雛を誘拐する。親だと思って近づいてくる、そのすきを狙って雀が雛を引っ張りでし外へ放り出すのである。なんでそんなことをするのかは、実際にははっきりとは分かっていない。一説によると自分のテリトリーで他の鳥が営巣されることが気にいらないらしい。そのためのいやがらせみたいなものだという説である。
なのでチビが飛び出している状態を巣立ちが始まったとは思わなかった。どっちにしても巣立ちにしてはまだ早すぎるため、このままでは親も面倒見切れないだろう。このままカラスに食べられてしまうのがオチだ。そう思いとっさに保護しようと思い、そう行動するこにした。
チビ助を捕まえろうとした。
チビ助は無力だった。
人間の私が捕まえようと近づくため、ちょびっとだけ羽を広げて飛ぼうとすることヒョコっとした感じだったのでありますが、いとも簡単に鷲掴みできてしまう、そんな感じでありました。すばしっこいシジュウカラを捕まえるべくの全運動神経をこちらも発動したつもりだったが、気が抜けるくらいチビは無力だった。巣立ち3日くらい前のチビ、チビは恐ろしく無力だったのでびっくりしてしまったのであります。
チビはだが、怪我をしている訳ではない。そう判断し、そのまま巣箱にもどしたのでありました。がしかし、自分が理解できなかったことはこうなのであります。チビを鷲掴みにしてから巣箱に戻すまで、親鳥達は私に向かってヒステリックにジージー警告音を浴びせ、あらん限りの罵倒のような警告音を私に浴びせてき、巣箱に戻した後も言わば命の恩人である私に対して、その時、またその後も、敵認定の意思表示をしてくるようになったことであります。WW
いやはや、鳥の心は分からない。
それまで、私に警告音を鳴らすことがなかったため、信頼関係をこしらえるに成功したと思っていた。おおいなる勘違いであった。カラスを追っ払ってくれる、攻撃的な雀を追っ払ってくれる、なのでおいらに警告音を発することなどまずなかったのでありますが、その後は、巣箱に少しでも近づこうものなら、敵認定の対応をしてくるのであります。
がっかりです。
おいら命の恩人ス。
だが、だがなのであります。
その後、巣の中の録画モニターを確認した。雛は8羽いたはずだったが、7羽しかいない。
まさかと思いその次の日も確認した。7羽だった。何度も数えた。7羽しかいない。
ここからは自分の想像でしかない。
あの日、誘拐されたのはおそらく2羽だったのだ。
そして1羽はカラスに持っていかれた。カラスに1羽持っていかれた親鳥が精神を錯乱させて、裏の畑にいるおいらに助けを求めてきた。
そんなところである。残念ながら真相はそんなところではないだろうか。
1羽見殺しにしてしまった。そんな親鳥の恨み節である。
「すまん」
それしか言うことがない。
「次から気をつけるから」
そんな言葉は届くはずもない。
明日、おそらく全員巣立ちする。
おいらに出来ること、それは、近づかないこと、関わらないこと、かまわないこと、ほっといてあげることだろう。
主人公は親鳥でなければならない。親鳥を尊敬してついていき、餌の取り方をレクチャーしてもらったり、危険な場所を教えてもらったり、鳴き声を学んだり、親に付いていかなければ、逆に子は危険な境遇な状態となる。
つまり、よかれと思ってかまった瞬間、子は無能になる。「かまおう」という思いは「ほっといてやろう」という思いにシフトせねばならぬ。
がしかし、カラスに持ってかれるような場面があるとすれば自分はどうするだろう。例えカラスに食べられても自然の摂理に任せるべきだという言う意見がある。なにがあっても人間は介在してはダメだという、そんな意見があるのを知っている。
おいら、どうするんだろう。そんな時。
おいら、どうなってしまうんだろう。
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