個人戦だった。

女子の参加者は150人くらいか。

結果は1回目で負けた。

シードだったので正確に言うと2回戦負けである。

有希は相手が同じ2年ペで各下の子なので、なめてかかったと思う。

試合中も笑いながらやっていた。ちょっとミスすると、後ろのセコンドについているチームメートにニヤニヤした顔を向けながらゲームにのぞんでいた。

完全に相手をなめているようだった。



「あ こりゃ へたすりゃ 負けるなぁ」と思っていたら本当に負けた。3?1で負けた。



夜、寝る時、お父さんはダメだしした。

こんな時、ダメだしするべきかどうか迷うところだが、ダメだしした。



 「お前、笑いながらやってただろ、だから負けたんだと思うよ。

 お前が勝利の女神様だったらどっちの味方するよ。真剣にやってる人間にしか興味を持たないだろ。

 いっつもベスト4に入る、石〇さんとか、都〇さんとか、山〇さんとか、和〇さんとか、

 彼女達は相手がどんな相手でも笑い顔を絶対に見せたことないだろ。

 勝利の女神様に嫌われたら、どうなるかを知っているからだよ。だから笑わないんだよ。

 そこらへんのからくりを知ってっから、だから笑わないんだよ.

 ツキに逃げられたくないから、必死でツキの神様の足元にしがみついて、

 捨てないでくれ!いかないでくれ!って、親に捨てられるときの子供みたいに、

 必死で祈ってっから、だから、悲壮だし、さびしげだし、なきそうだし、

 笑顔のえの字も出てくる気配がないんだよ この アホが」



有希は布団をかぶったまま返事をしなかった。

お父さんにこんなダメだしをされて、くやしいという気持ちに支配されているのだろう。

ヤな親父だと思っているだろう。意地悪な親父だと思っているだろう。

でも、ヤな親父を続けられるうちは続けようと思う。

(子供にもよると思うが)意地悪で無神経な人間がそばにいることが、必要なんだということは、君が将来、子供を持ってから初めて分かるだろう。



でも本格的な反抗期に突入したら、不本意にも良い親父を演じなければならないかもしれない。

残念ながら、精錬潔白な人間を余儀なくされるような気がする。

例え娘でも一個の人格となってしまった人間を目の前にして、人格を否定するようなことが出来るだろうか。

心の中でむせび泣きながら意地悪行為をする芸が自分に出来るだろうか。

それが出来る親父が本当の立派な親父なのかもしれない。

自分は、なんか日よってしまいそうな気がする。

そんな日が目前にせまっているように思う。

いつまでヤな親父をやれるか、そこんとこが勝負のような気がする。

そこんところのせめぎ合いのような気がする。



ヤな親父が出来なくなる日、意地悪や無神経の押売りが出来なくなる日、それが「親父が死ぬ日」であり、「親父のXデー」なのだと思う。

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このページは、yukijirouが2010年5月20日 14:08に書いたブログ記事です。

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